18人が本棚に入れています
本棚に追加
/67ページ
*2* お菓子配りの魔女
人は十日食べなくても案外へいきだけど、三日寝ないと生きていけないらしい。
じゃあ、季節外れの嵐がやっと過ぎ去った五日目の朝をむかえるわたしは、超人だ。
みんなに自慢してまわってもいいくらい。いや、自慢するような友だちもいないけど。
「……あっ! あっ、あ、あぁっ!」
んで、そんなわたしの今現在はというと、薄暗い夜明けの街で立ちすくんでいた。虚無顔で、だ。
(やっちまった。そりゃ、近道をしようとしたわたしが悪いんだけども)
多くの娼館が軒をつらねるこの街に、昼も夜も関係ない。
とくに獰猛なモンスターは夜行性なことが大半なので、ハントクエスト帰りの血気盛んな冒険者たちが欲のはけ口をさがして闊歩するのは、昼間のほうが多いくらいだ。
で、なにが言いたいのかっていうと、どんな時間帯であれ、軽率に近道をえらんじゃいけないってことだ。
盛大にヤッている場面にエンカウントすることが、少なくないので。
「あっ、イイ、イイわぁ……夫よりすごぉい……あぁんっ!」
路地裏へ一歩足を踏み入れれば、そこはドぎついピンクな光景。
レンガ造りの壁に押しつけられたどこぞのご婦人が、後ろから突かれて喘ぎまくっている。
人妻・不倫・NTRプレイか。マジでやめてくれよ。べつに観たくもないAVを予告なしにハイビジョンフルスクリーンで放映された気分だ。
最初のコメントを投稿しよう!