*2* お菓子配りの魔女

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「男娼にキャンディをわたす、黒いローブの魔術師……まさか、『お菓子配りの魔女』ですか?」 「やだ、そんな風に呼ばれてるの? わたし」  ここで仕事をはじめて、それなりになる。  今日みたいに『お誘い』をかわす理由と個人的な趣味ではじめた『お菓子配り』だけど、そんな通り名がついていたとは。 「でもまぁ、それなら詳しい説明はいらないね。見たところ肌に発疹もないし……そのキャンディ、忘れずに舐めてくださいね。そしたら大丈夫なので」  さっと視診をすませ、さっき強引に抱き寄せられたときにできたローブのしわを、なでて伸ばす。 「ちょっと遠いけど、ここから西へ行った三番街のはずれにきれいな小川があるから、サッパリできますよ。あぁそれと──あなた、前髪を切ったら人気者になるかも」 「え……あのっ!」 「ではでは」  ひらりと右手を振って、ローブをひるがえす。  青年が追ってくることは、なかった。
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