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 薄緑色のドレスを着た女性は私を見つめると微笑み、スカートを持ってお辞儀をした。 「ごきげんよう。わたくしロローア・リプトン様の婚約者シャラン・シールビアと申します。あなたは誰ですか?」   (え、王子の婚約者?)  ああ、婚約者の王子が見知らぬ女性――私と、お茶をしていたから確認しにきたのか。この展開は面倒……だがこの人は王子の婚約者、私は薬師として国に支えているし、魔女と言えばわかるだろう。  テーブルから立ち上がり、ドレスの女性に頭を下げる。 「はじめまして、私はリネン森の魔女のシャーリーと言います」 「リネンの森? 魔女ですって? 魔女と言えば、いつも独自の森にいて外に出ないと聞いています。そのリネンの森の魔女がどうして王城の庭園にいて、ロローア様とお茶をしておりますの?」  どうしてって――それは王子に呼ばれたからだけど……。それを伝えても、面倒な事になりそう。だけど、黙っていても面倒な事になる。 「ロローア……殿下に呼ばれました」  王子の事を王子、様と付けて呼ばず、ロマンス小説に書いてあった殿下と付けた。 「まあ、ロローア様があなたをここへと呼んだのですか? 何の為に?」  何の為に? 前のお礼だと思うけど……。バールド森の封印の話を、婚約者の彼女にしてもいいのかわからない。何も話せなくて黙る私に、彼女は苛立ちをあらわにした。 「ロローア様の婚約者のわたくしに、話せないこと?」   「いいえ、私はただお茶へ誘われただけで何もありません。殿下が戻りしだい、リネンの森へ帰ります」  あまりにも面倒で――魔法を使い、ここから姿を消してしまおうかと考えがよぎる。その場所へ、用事を終わらせた王子が戻ってきた。 「魔女、お待たせ。――え、シャラン嬢? 今日の王妃教育は終わったのかい?」  庭園に戻ってきた王子は、私のテーブル近くに婚約者のシャラン様を見て驚いた表情をした。その王子の姿を見て、少し眉をひそめた。 「ええ、先ほど王妃教育は終わりましたわ。お時間できたので、ロローア様をお茶に誘おうと思ったのですが、魔女様とお茶をしていると聞き会いに来ましたわ」 「おお、そうか。なら、シャラン嬢もお茶に混ざればいい」 「わたくしもご一緒して、よいのですか?」 「いいよ、魔女もいいだろう?」  まあ、お茶を飲むのはいいが……周りのメイド達の目が「このお茶の時間を邪魔をするな」と言っている。それなら私は書庫へと移動しよう。  ニコッと微笑み。 「……私はお茶を堪能したので、おいとまします」  手に杖を出して、庭園から姿を消した。
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