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「シャーリー、キョン行ってくるわね!」 「いってらっしゃい、母」 「リー、気をつけろよ」  夕方ごろ、そのに森を覆いつくすくじら雲が現れた。リシャン母はホウキにまたがり空を飛び、くじら雲に突っ込んでいった。 「おお、あーやって乗るのか……すごい」 「違う、アレは入口だな」  そう父が空を見上げて呟く。それに釣られて見上げると、くじら雲は母が突っ込んだ後、弾けるように消えていった。 「ほんとうなんだ……母、行っちゃった」 「すぐ、帰ってくるさ」  キョン父はお気に入りの場所で、お昼寝を始めた。  ⭐︎    魔女は老いず。魔力の量に伴い、その寿命は千年以上と長い。リシャン母の歳は243歳、父は年齢不詳、私は18歳。  母にリンネの森を任された私はさっそく、家を自分が使いやすいよう変えることにした。これはリシャン母に許可をもらっているし、やってみなさいとも言われている。    将来、リシャン母とキョン父の元を離れて。  自分の森を所有するときが来るから、いい機会なのだ。 「さてと、どこから始めるかな?」  いままでは、母のベッドの横に布団をひいて寝ていた。温室と調合室は母の許可なく中に入れなかった。キッチン、お風呂の水回りの掃除を魔法で簡単に終わらせようとすれば、母に怒られた。    もちろん洗濯もだ。  だけど、今日からズボラな私がこの家の主人となれば。掃除はクリーンの魔法で全て終わらせて、寝相がわるいのでベッドは大きな真っ白いレースの天蓋付き。    キッチンとお風呂、トイレは温室と家に一つずつ。  書庫には私の書きかけの魔導書の他に薬草、美味しい食べ物、呪われた家具の本。それを読むためのお大きめな1人がけのフカフカなソファー。調合室の棚は私の身長に合わせて低めにしようと。次々、家の中を造形魔法を使い自分好みに変えた。 「よし、家の中と温室はこんなものかな?」  私だって魔女になって8年は経つ。多くの魔法、自作の魔法も使えて、薬師としてのノウハウ全て母に叩き込まれている。まだ見習い魔女だけど、魔女薬師の資格は取得している。    クローゼットの中にしまいっぱなしの、胸に葉っぱのデザインの魔女薬師バッジが付いたローブを羽織れば、私だって立派な魔女薬師だ。  この、魔女薬師にも位がある。  葉っぱ1枚が魔女薬師の見習い。  葉っぱ2枚が新人魔女薬師。  葉っぱ3枚が魔女薬師。  葉っぱ4枚が上級魔女薬師。  葉っぱ5枚が特級薬師――母はここ!  資格をとってから1年間。魔女薬師連合の依頼をクリアして、実績を積まないと魔女へと降格される。1年依頼をクリアして、実績を積めば新人魔女薬師になれる。 (薬師連合からの依頼は1ヶ月後だから、まだいいとして……まずは薬を作る練習をしなくちゃね) 「今日は温室でモモコロ草と魔法水を使って、腹痛のを作ろう!」
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