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「……おはようございます。今日はなんの様ですか?」
また早朝、呼び鈴が鳴った。昨夜は夜遅くまでギルド卸す、火傷が治る塗り薬と腰痛に効く塗り薬を大量に作っていた。
私は王族専属だが。担当からされる依頼は王家だけではなく。国中にある冒険者ギルド、街の薬局などに卸す薬も作っている。魔女の薬はよく効くいわれ、少し金額は高いが重宝されているのだ。
「ギルドに卸す、依頼は明後日までですが? 他の依頼でしょうか?」
本来の呼び鈴は依頼のときだけ使用される物。雇われてはいるが、薬師魔女をメイドの様に呼ぶ鈴ではない。王族専属だが、私と使用人達の雇用条件は違う。私は王族から依頼を受けて、それに見舞う品を収め、それ相当のお金をもうただそれだけの関係。
母が言っていたなぁ。
昔、母の担当をする男性から、何度も食事に誘われたと。いくら母が断っても誘ってくるので……翌日その担当が苦手な、大量のネズミを箱に詰めて送ったのだとか。
『母。ネズミさん、かわいそう』
『フフ、大丈夫よシャーリー。そのネズミはわたしが魔法で出した幻のネズミさんだから、ものの10分で消えてしまうわ』
『え? ネズミさん消えちゃうの?』
『ええ、そうよ。シャーリーも同じこたがあったら、やってみるといいわ』
母はクスクス楽しげに笑い。父は"ほどほどにしとけよ"そんな表情だったかな。
「いや、僕から依頼はない。薬師魔女にお願いがあるんだ、僕に魔女魔法を見せてくれ!」
「え?」
――魔女魔法が見たい?
「い、嫌です。魔女魔法は私だけのもの……人のことを"ちんちくりん"と呼ぶし。いくら王子だからと言って、知らない人には見せません」
魔女魔法とは。一般に伝わる火水風土雷の属性、攻撃、防御、生活魔法などとは違い。魔女が自ら作り名前をつけた創造魔法。いま私が編みだしたい魔法はこの爆発ヘアーを瞬時に治す魔法。だが、魔法式がむずかしく魔法は完成していない。
魔女歴8年の私がつかえる魔法は。雲モクモク雨降りの魔法と本のページペラペーラの魔法の2つだけ。リシャン母は私よりも多くの魔法を編み出し、それをサラッと使う。使いたい魔法があった場合。魔法を作った魔女に許可をもらうまで、その魔法を使用することはできない。
――自分が1から魔法を組み上げ、それを魔導書に描いた、世界に一つしかない魔法。
薬だってそう。独自の調合の仕方があるし、自分で付けた名前だってついている――火傷の塗り薬は「火傷キレイキレーイ」腰痛に効く塗り薬は「腰、痛いの飛んでケェー!」である――独特のセンスなので、まず世に出ることはないのである。
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