7

1/1
前へ
/36ページ
次へ

7

「魔女は僕のいうことが聞けないのか?」   「はい、魔女魔法以外であれば見せることができますが、そちらには魔法使いの方が居るはずです、その方に頼んでください」 「すでに見せてもらったし、僕は火魔法が使える。魔女、独自の魔法が見たい! 見せてくれ」  魔女独自の魔法ですか。そうですね――魔法陣に動物をモチーフにした模様、花の模様、雨の魔法陣、草木の魔法陣と魔女の魔法陣は他とは違いキレイなものが多い。たまに、私のように絵が下手な方もいて……面白いものも見れる。 「魔法を見せてくれるのなら、魔女を城へご招待する。城に来れば書庫にも入れるし、美味しい食事もご馳走する、デザートも食べ放題だ!」  なに。昔の魔法使いが書いた魔導書が読める書庫、分厚い肉が出ると聞いた城の食事、クリームたっぷりのデザートが食べれる⁉︎ ゴクッ。いやいや、基本魔女は王城へは行かない。 (書庫、食事はすごく惹かれるが……人に会うのは怖い)  前の家族のように「バケモノ」と言う人がいるかも。この容姿を笑う者がいるかも。  ――それらで、私は傷付きたくない。 《シャーリー惑わされるな。もうすぐタヌキの行商がこの森にやって来るだろう。変わった本、肉、デザートが手に入る。金はリシャンから預かっているから心配はいらない》  いつもの場所(家の前)でお昼寝中のキョン父から念話が入る。そうだ、タヌキの行商――アイテムボックスを持ち、世界中のいろんな物を売りに来るタヌキ族の獣人が来る。  甘いキャンディー、チョコ、ビスケット。絵本、歴史書、ファンタジー、恋愛の本、髪型アレンジの本。ここでは手に入らない魔物の肉と素材。ランタンなどの魔道具類。いい香りがする石鹸、シャンプー、化粧品。毎回、欲しい者がありすぎて困ったなぁ。  その行商がもうすぐやってくる。  考えるだけで、楽しくなってきた。 《父、ありがとう》 《フン、昼寝の邪魔だかなら》  クワァー、外から父の大きな欠伸が聞こえた。フフ、優しい父に心がほっこりする。  部屋の机の上にある通信鏡。その通信鏡に映る彼が何を思って、魔女に会いたいのかわからない。もしかして魔女を捕まえたい? 私を見てチョロそうだと思った? これでもリシャン母から、魔女の資格をもらった立派な魔女なのだよ――まだ8年だけど。 「すみません。ご招待を受けても、そちらには行きません。薬の依頼がないのでしたら通信を切ります」 「おい、待て……」  ニッコリ笑い、焦る彼の顔を見ながら私は通信を切った。すぐに呼び鈴がなるが魔法で小さくした。通信鏡はいくらかけても、相手が鏡に触れないと通話ができないからね。 「さてと、森に雨を降らせですか」
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

58人が本棚に入れています
本棚に追加