花散る君は美しい

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「彼らは荷物を持っていた。今夜発つんだと分かりました。そのあとは、もう自分でも何をしているのかよくわからなかった……、我に返ったときには散った花びらの上に二人が倒れていて、そうか、私がやったんだと思いました」    いつからだろう。展示室には他に誰もいない。    先生は、独白を続ける。 「どうにか始末しなければと思って、彼女は樹の根元に埋めました。憎らしくも美しい彼女はここに眠るのが当然だという思いがあったのでね。でも、男を一緒に埋めるのは、どうしても嫌でした。死してなお、一緒にいさせるものかという思いで、だいぶ厄介でしたけど他の場所で処理しました」    この告白が事実だとしたら重大事件だ。  いや、こんな大人しそうな人が、そんな大それたことをするはずがない。  かつがれているのだ。  でも、何のために?    事実か否かよりも、否応なしに膨れ上がる鮮明な月夜の殺人のイメージに圧倒され、僕は倒れそうだった。
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