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校舎はまだ残っている生徒たちの賑やかな笑い声であふれていた。光希は歩いてるだけで、まるで芸能人のように握手を求められたり声を掛けられる。
そんな姿は見飽きているので、横目で見ながら校舎を後にした。
「また嫌なことあった?」
浮かない表情をしている私の顔を覗き込みながら言った。
「まあね。いろいろと」
「学校生活は辛いかもしれないけど、卒業したら俺と結婚するんだから。それまで頑張ろうよ」
柔らかい笑顔で微笑むと、本気なのか冗談なのかわからないトーンで言った。
何度か聞いたことのあるこの台詞が冗談なのか本気なのかは、いまだに私も分かっていない。
軽い気持ちで言われていても、嬉しいもので自然と口元が緩んでしまう。勘違いでなければ、光希は少なからず私に好意を寄せてくれてるのかな、と思ってしまう。
光希といると心の浮き沈みがなく、落ち着いていられた。
ときめいたりしたことないのは、子供の頃からずっと一緒にいたからで、落ち着くこの感情が恋なのだと思っていた。
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