03 鬼の子に触れる手

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鬼歯(おにば)って言うんだけど・・・・・」 「それ、八重歯だろ!」 そう言いながら、くくくっと肩を揺らして笑っていた。 こんな顔で笑うんだ———。 ずっと不機嫌そうな顔をしていたので、目元がくしゃっとなる笑い方が意外だった。 「俺にも八重歯あるけどな」 そう言うと、ニーッと笑って歯を見せた。 確かに、私と似た鬼歯っぽいのが見えた。 「・・・・・それ、八重歯って言うの? 私、昔から笑うとこの鬼歯が見えるから、笑うなって言われてて———」 「鬼歯も八重歯も同じじゃね? 俺は自分のチャームポイントだと思ってる。 女の八重歯も可愛いけどな」 可愛いという言葉に免疫がない私の頬は勢いよく赤く染まった。可愛いなんて、生まれて初めて言われた。
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