桜散るらむ

2年前の3月。
その年は年明けから気温が高く、4月を待たずに桜が満開になった。

アタシは何かに導かれるように、街外れの丘の上の桜を目指した。

約束なんてしていないけど、タケルが待ってくれているような気がした。

少しだけ駆け足で、遊歩道の階段を上がり、桜の木を見渡せる広場に出た。

「…ッ」

そこには、予感通りタケルがいた。

でも。

アタシに背を向けてピクニックシートに座るタケルの横には、見知らぬ女の子が座っている。
二人は仲良く肩を並べて座り、桜の木を見上げていた。

「また今年も二人でここに来れてよかった」

隣の女の子が、嬉しそうに弾んだ声でタケルに語りかけ、タケルの肩に頭を預けた。

“そっか。そうだよね”

アタシはそう独りごちた。
そして、女の子が言ったセリフを、頭の中で反芻してみる。

“マタコトシモフタリデココニコレテヨカッタ”

その意味を悟ったアタシは、なんとも形容し難い感情が湧き出てくるのを必死で抑えながら、そっと場を後にした。