最後の花火

兄弟のモラル

　「俺はどうせ気が使えないバカなやつだよ」
は?何で交換日記に書いたことがバレてるの?お母さんもお父さんも仕事の日の夜、兄貴と弟と食事をしているときだった。兄貴が急にこう切り出してきたのだ。
バレた。どこからか交換日記の内容が漏洩したんだ。
このことを交換日記に書き、ノートを置く場所を変えることになったが、交換日記はこのあとすぐに終わってしまった。兄貴のモラルと気遣いのなさを恨むしかなかった。
　それから、兄貴との会話は無くなった。話したくなかった。あんな人の気持ちがわからない奴なんかとは。
　なんだか、両親が兄貴ばっかかまってる気がして何なかった。このとき兄貴は中２、卒業も何もない。だったらこっちの方を見てほしい。兄貴は普通の卒業式で普通に小学校を卒業した。私はそれができない。もっとあからさまに慰めてよ。もっと気晴らしになることさせてよ。こんな状態なんだから勝手なことがしたい気持ちでいっぱい。だから勝手なことさせて。させてもらったところで許してほしい。
　縁側で宿題をやったり、絵を書いたりする日が続いた。小学校の卒業式も間近となったある日、お父さんがＰＴA役員だったということもあり、卒業式が終わったあとに何か特別なことをやってくれるらしいということがわかった。なので当日はランドセルを持っていく必要があるということも。
卒業式か。もう、終わりなんだな。少しの実感を感じながら、友達とのお別れをする時間がしっかり取れていないことをくやみつつ、縁側から恨めしいくらいにきれいな空を、ただ黙って眺めていた。