荒れ地の小屋で

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突然の状況に驚きつつも、私は周囲を見回した。 魔法だか代替わりだか知らないが、それ以前にこの場所が一体どこなのかを知っておかなければ何も始まらない。 しかし、見えるのはどこまでも続く荒野ばかり。このような淋しい場所がこの国に存在していたなんて、驚きである。 この国は比較的面積が狭い。だから、子供の私でもある程度国の土地柄などは理解していたつもりなのだが、それでもこの場所の存在のことは知らなかった。 強く冷たい風が私の髪を乱して、私は思わず身震いした。からからに乾いた土を風が巻き上げるので、終始どこかで砂埃が舞っている。 うっかり目に砂粒が入ってしまい、私は目を瞬いた。 レトニア連合王国は寒冷な国ではない。だが、季節はちゃんと存在している以上、秋や冬に風に吹かれれば寒いに決まっている。 そこまで考えたところで、私はふと気づいた。 そういえばあの老婆はどこだ? いつの間にか私の腕の掴まれた感覚が消えている。突然のことに驚いて、全く気が付かなかった。 慌てて周囲を見回すと、はるか遠くに老婆らしき後ろ姿が見えた。一体いつの間にあんな遠くまで、と戸惑う。 彼女が何者かは分からないものの、少なくとも北も南も分からないようなこんな場所に置いてけぼりにされたりすれば、それこそ自分の身に危険が及ぶ。 そうなるくらいならば老婆について行ったほうが良いだろう。 「あ、あの、待ってください!」 追いかけようとして、砂に足を取られて転んでしまいそうになる。 なんとか体勢を立て直して、私は老婆を追いかけた。 ようやく追いついたと思えば、いつの間にか目の前に古びた小屋があった。 先程までこんなものあっただろうか、と疑問に思う。 まじまじとそれを見つめている私をよそに、老婆は小屋の扉を開き中へ入っていってしまう。 強度が不安になるほど朽ちた扉が、ギィ・・・と音を立てて、ゆっくりと閉まった。 いや、閉まり切ってはない。 金具がだめになっているのか、閉まるか閉まらないかの中途半端な場所で、扉───板と言った方がいいのかもしれない───が前後に揺れていた。 一人取り残された私は、しばし思案する。 これは入っていってもいいものなのだろうか? ここに来てから一度も口を利かない老婆のことを考えてふと不安になる。 せめて「ついてきな」だとか「入りな」だとか、その程度の必要なことくらい言ってくれてもよいではないか。 だが、今そんなことを彼女に訴えたところでどうにもならないだろう。生まれ持った性格なのかどうかは知らないが、何を言おうと聞いてくれやしなさそうな雰囲気がその老婆にあった。 憶測でしかないが、きっと彼女は頑固な性格だろう。 「何突っ立ってんだい。早く入りな!」 入ろうか入らまいか決めあぐねていると、いきなり怒鳴られて私は飛び上がった。 見ると小屋の扉が開いており、そこから老婆がこちらを覗いている。 「ご、ごめんなさい」 その大声に萎縮しそうになりながらも、私は急いで小屋の中へと駆け込んだ。
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