告白

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告白

 それからのひと月、ブライアンは薬の後遺症に苦しみ続けた。薬の効き目が切れてからはひどい頭痛がし、目眩と吐き気、気味の悪い妄想に悩まされる。  弱音を漏らすことはなかったが、見ているだけで辛さが伝わってきた。  ベンジャミンとケイトは献身的に看護し、特にケイトは睡眠時以外は全ての時間をブライアンに捧げた。  そして……暗いトンネルを抜けるように、ようやくブライアンの頭はハッキリとしてきた。徐々に話が出来る時間が増え、ベッドの上で起き上がることも出来るようになったのだ。  ある日、ブライアンは決意した。カイルのことを話し、ケイトに謝ろうと。今日は体調も良く、ベッドで上体を起こし続けていられそうだった。 「ケイト。話があるんだ」 「なあに? ブライアン、あらたまって」 「カイルのことなんだ」  ベッド横の椅子に座って果物を剥いていたケイトは、姿勢を正しブライアンの顔をじっと見つめた。 「最後の戦いでのことだーー」  ブライアンが戦場でのことを話している間、ケイトは一点を見つめ耳を傾けていた。次第に唇が震え、ついには我慢できずに嗚咽が漏れる。 「ーーカイルをケイトのもとに連れて帰ることが出来なかった。許してほしい」    涙を流し続けているケイトに、ブライアンが苦しげに絞り出すように謝罪の言葉を口にした。ケイトは首を横に振る。 「ブライアン、カイルの最期を話してくれてありがとう……。カイルは、ブライアンを助けることが出来て嬉しかったと思うわ。だって、ブライアンのことをとても好きだったから……」 「本当ならあの時死んでいたのは私の方だった。カイルが庇ってくれたから、今、私は生きている。一緒に帰ってくることが出来たならどんなに良かっただろう。本当にすまない、ケイト」  ブライアンの顔が苦痛と悲しみに歪む。 「……もちろんカイルにも生きて戻って欲しかった。でもあのひどい戦いで生き残れたのは奇跡だったんでしょう? きっとそれは、カイルが起こしてくれた奇跡だわ。あなただけでも帰って来られたこと、カイルに感謝してもしきれないの……本当に」  ケイトはブライアンの手を握った。
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