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シェルダン公爵邸にて
「で、ブライアン様は回復なされたのかしら」
ミレーヌがティーカップを優雅に口に運びながら言った。
ここはシェルダン公爵家の中庭に設てあるガゼボ。気持ちよく晴れた午後、柔らかな風に吹かれながらケイトとミレーヌは話をしていた。人払いはしてあるし、ここならば使用人に話を聞かれることもない。
「ええ、中庭を一緒に散歩できるくらいには。薬の離脱症状が抜けるまでは大変だったけれど、ブライアンはよく耐えてくれたわ。これからは、衰えた体力と筋力をつけていかなくては」
「それにしても恐ろしい薬ね。そんな物が存在していたなんて。むしろ、今まで悪事に使われていなかったのが奇跡と言うべきかしら」
ミレーヌはため息をつきながら言う。
「国王陛下がその木を根絶やしにするよう命令したのは英断だと思うわ。研究用と言って残しておいても碌なことにならないでしょうし」
ユージェニーが使った薬というのは、ホークス伯爵家の領地にのみ生息する木の実から抽出された物であった。昔からホークス家に伝わる薬であり痛みを感じなくさせる効き目があることから、ホークス家の子孫は万が一のために常に持ち歩いているという。ユージェニーは戦場という危険な場所に行くため多めに持っていた。その薬を、ブライアンに使ったのだ。
「それで、彼女の目的は何だったの?」
「……彼女は、ブライアンのことが好きだったの。士官学校の頃から」
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