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その瞬間、ユージェニーの心に悪魔が忍び寄った。ブライアンを自分のものにしたい。このままアークライト家に戻せばケイトに取られてしまう。それだけは許せない……
ユージェニーは懐に入れていたホークス家秘伝の薬をそっと取り出し、ブライアンに渡した。疑うことなく彼はそれを飲み、しばらくすると彼の意識は混濁し始めて人形のようになった。
(これでいい。私はブライアンを何としても手に入れる。結婚して領地に引っ込み、社交界から離れて二人で暮らすのだ。そうしたら、薬を抜いて元の状態に戻してあげるから……)
この薬は効き目がほぼ一日。持続させるには毎日飲ませ続ける必要がある。
だから心の病気と偽り公爵とケイトを遠ざけ、ユージェニー自ら夕食時に薬を飲ませた。
翌夕方、薬の効き目が切れる頃、ブライアンは少し意識が回復する。その時に『ケイトはブライアンを許していない』と言い聞かせ続けた。その度に彼は悲しみ、絶望した。
こうしてじっくりと結婚に持ち込もうとしていたユージェニーだが、誤算があった。薬を処方させていたホークス家の御用医師から忠告を受けたのだ。
「ユージェニー様、この薬はひと月以上服用させてはいけません。痛みを麻痺させるとともに正常な判断力を奪い意識を混濁させる薬ですが、ひと月以上服用した場合、ほとんどが命を落とします。これ以上続けるのは危険です」
「死ぬかもしれないと?」
「はい。死なずとも、意識が二度と戻らず廃人になる可能性もあります」
薬を飲ませるようになってそろそろひと月だ。ユージェニーはすぐに結婚を申し出ようと決意した。彼が死んでしまっては元も子もないのだから急がねばならない。
そして領地から公爵とケイトを呼び寄せたーー
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