シェルダン公爵邸にて

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「ーーという訳なの。ブライアンが否と言えない状態にして結婚を承諾させ、私たちにも彼の意思だと思わせて押し通そうとしたみたい。あの時、抵抗して良かったわ」 「そうね、よく抵抗したわね。あなたも公爵もお花畑頭だもの、言われたことを信じ込んで『はいわかりました』と了承しかねなかったでしょう」 「……あなたのおかげなのよ、ミレーヌ。あなたが以前、諦めるなって言ってくれたから。手の届く場所にいるのなら手を伸ばせってね。だから私、ブライアンを諦めたくなかったの」 「ふふ、役に立ったなら良かったわ」 「とても。ありがとう、ミレーヌ」 「それにしてもモースはいいタイミングだったわね」 「ええ。ブライアンの様子があまりにおかしいので極秘に調べていたらしいわ。そしてホークス家の薬の存在に辿り着き、軍に連絡して医師を問い詰め、白状させたのよ」 「優秀な執事で良かったこと。ところでユージェニーは逮捕されたけどすぐに釈放されたわね。両親共々貴族籍は抜かれ、首都から追放になったけれど」 「そうなの。ブライアンが投獄まではしないで欲しいと言ったので。命を取ろうとした訳でもないからと」 「ブライアン様までお花畑なのね? アークライト家の将来が思いやられるわ。そんなんじゃ生き残っていけないわよ」 「ふふっ、そうかもしれないわね。心しておくわ」  一瞬の沈黙が訪れた。餌を(ついば)む小鳥のさえずりが聞こえる。 「ミレーヌ。ラインハルト王子殿下とはもう顔合わせしてるんでしょう? どんな方なの?」 「そうねえ。見た目は悪くないわ。異国の人らしくエキゾチックでね。人質としての婚姻だからと嫌な態度を取ったり、逆に卑屈な態度を取ったりすることもないから……今のところは好ましいかしら」  噂では、王子の方はミレーヌに一目惚れをしてしまったらしい。元々、兄よりも優秀と言われていた第二王子である。お互いの国で何事か起きぬ限り、二人の結婚はメリットしかない。 「ミレーヌ、幸せになってね」 「ええ。出来る限り幸せに生きるわ。あなたもね」  二人の公爵令嬢は微笑み合った。
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