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それから心咲は、蒼葉に言われたとおり、髪を下ろし、大学生活の中で慣れないながらも、みんなに少しずつ笑顔を向けるようになった。
するとすぐに、友達もできた。
あの頃から想像できないくらい楽しく充実していると感じる毎日になっていた。桜の下のベンチにも通っている。
今日もいつものベンチに行く準備をしていると、友達に桜の下のベンチについて聞かれた。
「別棟の所の桜の下のベンチに行ってるけど誰かと待ち合わせしてるの?」
心咲は、誰にも言ってないのに、あのベンチで蒼葉と会っているのを見られていたのかもと考え焦り始めた。
「え?何か見た?」
「この前あのベンチに1人で心咲が座ってるのみたから」
「私何かしてた?」
「1人でベンチに座ってた。誰かと待ち合わせしてるの?好きな人?」
心咲は、蒼葉の事について聞かれると返答に困ってしまう。何と説明していいのかわからない。
自殺願望からの出会いなんて事実をいうのもはばかられる。
初日から蒼葉の事が気になっていたのは事実だ。だから、意識しないように、この気持ちに名前をつけていなかった。
だが、蒼葉との時間を増やす度に、自分の想いを意識しないようにするのも限界にきていた。
自分をわかってくれた。
助けてくれた。
そして変えてくれた。
好きにならないわけがない。
友達の質問攻撃には『気になる人』という事にして抜けてきた。
——早く会いたい……。
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