少年兵と百鬼夜行

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少年兵と百鬼夜行

 時は少し流れ、鬼の子は14歳になった。この頃、太平洋戦争が激化し、一部地域では14歳の少年も、少年兵として駆り出されるようになってきた。  表向きは志願者のみということになっていたが、少なくとも鬼の子がいる地域では、強制されていた。  彼らは学校に集められ、毎日訓練をさせられる。  戦争は嫌だが、ひとつだけ、鬼の子にとって利点があった。全員が戦闘帽をかぶるので、角が隠れるのだ。おまけに、皆角しか見ていなかったため、彼が鬼の子だと、誰も気づかない。  おかげで、鬼の子は初めて同年代と話せるようになった。  ある夜、ひとりの少年が声を殺して泣いていた。鬼の子が声をかけると、自分は13歳なのに、親に無理やり14歳のフリをさせられ、この場にいること。怖くて仕方ないことを話してくれた。  他の子供達にも不安が伝播し、泣く子が増えていく。 「大丈夫だよ、皆。僕がなんとかする」  鬼の子は勇気づけるように、明るい声で言うが、希望を持つ者は、ひとりもいない。 「勝手なこと言うなよ、お前に何ができるんだ?」 「そうだそうだ!」  今度は怒りが伝播し、皆鬼の子を責め立てる。だが、鬼の子は動じない。むしろ、笑顔を浮かべている。 「ごらん、僕は人間じゃない。鬼の子だ」  寝ている時でさえ外さなかった戦闘帽を外す。彼らは動揺するが、鬼の子は相変わらず笑顔のまま。 「明日は、百鬼夜行だ。皆、妖怪のフリをして紛れ込むんだ。そしたら遠くへ行ける」 「でも、どうやって……」 「そんなの、無理だよ」  少年達はうつむき、弱音を吐く。だが、ひとりの少年は違った。 「いいじゃないか! ここから出られる可能性があるなら、やってみよう!」  声を上げたのは、少年兵をまとめている16歳の少年だ。彼の言葉に勇気づけられたのか、少年達の目に、希望の光が宿りだす。 「そうだね、ここにいるよりずっといい!」 「僕らはどうすればいい?」  少年達は、鬼の子を囲んだ。彼を頼って。 「明日は、いつも通り練習をするんだ。それで、その後……」  鬼の子は得意になって、明日の作戦を彼らに伝えた。
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