戸惑いの太刀魚

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***  先日、飲食店の厨房バイトで困っていたアルバイトの女の子に手順を説明した。僕からすると、たったのそれだけのことだ。  しかし、彼女の言によると、僕の接し方が威圧的で押し付けがましいものだったという。 「その子に僕と同じ日にシフトを入れないでほしいって言われたらしい。バイトが減って困る」  実際、そこの飲食店のバイトは無くなってしまった。グループの人材不足のお店にピンポイントに派遣される僕達のチームの性質上、今後は僕の代わりに先輩のクズ永が派遣されることになったらしい。 「別に僕は好きで背が伸びてる訳じゃないし、愛想がないのはわかってるけど、バイトで支障が出るほどとは思ってなくて」  バイトで出会う人には”他人”として他人行儀に接してこれていたはずなのに。失敗していた。 「それが地味に......ショックだった」  他人から何を言われても気にならない筈だった。その癖、自分が傷付いていることに動揺した。失敗したこと以上に”他人”からの言葉に必要以上に心を動かされていることが僕にとっては許せなかった、なんて僕にしかわからない自分の鬱屈とした感情だ。
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