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もみもみ
「びゅーんっ」
と叫んだ瞬間、思わず目を閉じたけれど、期待した浮遊感も、身構えた衝撃も何一つなくて‘あーあ、やっぱりこんなんじゃダメじゃない’と爺さんに文句を言おうと目を開ける。
「ユ…ユリア様っ?」
「気がつかれました…か…ぁあああぁ、奇跡ですわ。すぐに皆に知らせを…」
爺さんがいない…薄紫色の灯りでもなく、柔らかいオレンジ色の灯りが見える。来たのか?私はあの赤いとんがり屋根の城へ来た?
ここで私は大変なことに気づいた。来たのはいいけれど、今聞こえた声に全く聞き覚えがなく、誰一人として名前も性格もわからないんですけど?
ふかふかの布団が少し捲られ、ベッドの側にいた若いイケメンが私の手首を持って脈を取る。
「信じられませんが…正常ですね…あんなに脈も弱くて今にも…はぁ…心配いたしました、ユリア様…あの高熱からよく戻って来て下さいました…ん?脈は逆に速いくらいに…」
それは、あなたのようなイケメンに触れられて、至近距離で熱い眼差しを向けられているせいです。どうしよう…このイケメンは誰?
「ぁ…の…」
「ああ、ユリア様。長い眠りでしたから声が掠れてますね。少し喉を潤しませんと…」
いえ…イケメンに緊張した結果の声ですけど…見知らぬイケメンはサイドテーブルでグラスに水を用意すると
「失礼いたします」
シーツと私の背中の間に腕を入れて私を座らせた。そして私の背中を支えたままグラスを口元へ持ってくる。これは、ゴクゴク飲んではいけない場面ね…まずは小さく一口…
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