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私とラースは二人で果樹園へと向かう。
広い建物だがとてもシンプルな構造なので迷子の心配はなさそうだ。その上ラースは私達の部屋から最も近い出入口を教えてくれた。普通はそうよね…ウィルはくるくると回って教えてくれたのよ。あれって…私が逃げられないようになのかな?
でも、あれで違和感が大きくなって結果的に気づけたのだから良かった。さらにその結果、1000本ノックでも1000本ダッシュでもない、1000本揉みからも解放された。
「ここで左手に進むと門の方、右手に進むと建物の裏手、果樹園だよ」
「うん」
「ユリアは自由に出入りしていいからね」
「ありがとう、ラース」
私がそう言うと彼は繋いだ手にチュッとキスする。
「ラース…それ、好きだね…」
「ユリアが好き」
「…私も…」
「やりたい?いいよ」
ぇええぇぇ…?手を繋いだまま、自分の手の甲を私の顔の高さに持って来たラースは勘違いしたようだ。私も好きってことだったのに…チュッ…
「ラース様、ユリア様、お取り込み中失礼します。ご報告致します」
真面目な顔のポイヤックが足早に私達の側へ来たが、ラースは私の唇に手の甲を押しあてたままでいる。おかしいでしょ…私が頭を引いてぐいっと手を下げる間に
「ウィルとサーラの件、調査隊の手を離れ、法廷へ持ち込まれました」
とポイヤックの声がした。
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