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「執事学校の領域ではないと?」
「ウィルは自分の好みであるユリア様と結婚、婿入りをしたいと最初から考えていたようです。しかし1年以上経っても執事としてしか見てもらえないことから、ユリア様が心身ともウィルに依存するようにと考えた挙げ句、薬を使用し始めた、と。サーラも最初から甥の婿入りを希望して仕事を紹介し、行われていること全てを把握していたと供述しました。ですから二人とも、執事たるもの、などと言って資格剥奪という処分でなく、事件として扱われます」
ユリア嬢…可哀想な目にあっていたのね。
「…私は幸せになりたい…」
ユリア嬢の分まで…
「なれるよ、必ず。ユリアは僕と一緒に幸せになるんだ。さあ、まずは果樹園へ」
ラースはまたチュッと私の手にキスしてからポイヤックに背を向けて歩き始める。
「こうしてひとつ、ひとつのことを毎日自由に楽しんでいれば大丈夫だから、ユリア」
過去は振り返らなくていい、と言いたげなラースに頷き、繋いだ手にきゅっと力を入れる。
「見えたよ」
「わぁ…見渡せないの?どこまで続いてるんだろう…」
「広いね。今日はどの通路を通ろうか?」
「今日も明日も楽しみがあるんだね…嬉しい。今日は真ん中っ」
由利亜だった時なら、目の前の左端の通路からって言ったと思うけど、ユリアは真ん中からって言うのよ…何故だかわからないけれど。
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