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「朝食はここでいただけるの?昨日の部屋まで行った方がよければそうするよ?」
髪を纏めてもらい、背中をお湯で撫でてもらいながら聞くと
「ではお昼はあちらで、と伝えておきましょう。どちらでもかまわないのですが、ユリア様がご家族と過ごされて負担に感じられないようでしたら」
と返ってきた。
「一人で食べるよりもいいかも。お喋りした方が、記憶が戻るかもしれないでしょ?」
あくまでも、私はユリア嬢の記憶喪失設定で…あ…また閃いた。私、こんなにいろいろとアイデアが浮かぶタイプじゃないんだけど…目立たないように静かに生きてきたからね。でもこの胸を手に入れて明るく積極的なタイプになった気がする。コンプレックス克服ってこんなに重要なんだね。
「今日はお城の赤いとんがり屋根が全部見える場所へも行きたいな」
「…ユリア様?赤い屋根は…記憶が?」
「ええ、覚えているわ」
ふふふっ‘ええ’なんて返事したことなかったけれど、お嬢様っぽいかしら?ウィルが驚いているから、私の閃きは役立ったのよね?記憶が断片的に戻る可能性を皆に伝えてちょうだい。
まだ驚いているウィルをそのままに、私はバスタブから出ると置いてあったふわふわのタオルにプッハァーと顔を埋める…ああ、気持ちいい。
「ウィル、職務、職務」
「申し訳ございません、ユリア様…記憶が少しは…そうですか…」
そこで妖艶な笑みを見せた彼は
「マッサージも思い出されるかもしれませんね。このままあちらへ」
バスタブの奥にある施術台のようなベッドに向かって手のひらを上にした。
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