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遅めの朝食を終えると、お城を案内してもらう。廊下ですれ違う人たちの視線があまり好意的でないのは、ユリア嬢の過去の言動のせいだろう。
でもユリア嬢がそんなに悪いとも思えない。自分の居場所や心を守るために懸命に強くあろうとしたのではないかと想像出来るから。
そうなるとこのままでいいと思うけれど、将来的に私が婿取りをしてここに住むなら友好的にすべきだ。いやいや、あのお母様もいるからやっぱりお嫁に行く方が幸せよね。
「ウィルはお父様が雇い主?」
「左様でございます」
「じゃあ、もしも私が誰かと結婚してここを出て行く時には、新しい家のお手伝いさんが私のお世話して下さるってことね?」
私がそう聞くとゆっくりと足を止め、さらにゆっくりと振り返ったウィルは
「私の意向は…ユリア様と共にということです。ご一緒出来るように全力で周りの説得にあたりますのでユリア様はご心配なく」
と恭しくお辞儀する。別に、心配したわけでなくって…単純な質問だったんだけれど、大袈裟な演技でもなさそうな彼の様子に曖昧に頷いた。
「ユリア様は私と離れて…私以外の執事とでもやっていけると?」
曖昧な頷きが気に入らないのか、ウィルが私に確かめるように聞いて来る。
「うーん…正直、執事って必要なのか分からないのよ。だって、姉妹たちはクビにして執事なしでやってるんでしょ?」
正直過ぎたか…ウィルの瞳の色が一瞬変わったように見えたが、彼は結局何も言わずに案内を続けた。
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