つるつる

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ウィルに案内してもらった赤いとんがり屋根が見える場所からは、確かにお城の全貌が見えたが爺さんの本で見た方角とは違っていて一人でがっかりした。 庭の花はいつ、どれだけ摘んでもいいと教えてもらいながらお城に戻るが、出た場所と入る場所は違う。廊下に差し掛かるまでにゆっくりと案内されたコースを頭に思い描くと…わざと分かりづらい順に案内された気がしてきた。 「ウィル、昼食の間には自分で行ってみるから先に行ってて。私は庭に戻って少しお花を摘んで行く」 私がくるりと今来た通路を引き返し始めると 「私もご一緒します」 「ううん。もう案内してもらったんだから、自分の住まいくらい自分で移動するわ」 ついて来ようとしたウィルをその場に置いて扉を開いた。このまま庭に行って、そこから最初に出た場所を探すか…とまずは庭までキョロキョロしながら歩く。無駄にお城の中を回転して案内されたようなので、案外すぐ隣に出入口がもうひとつあるかと思ったんだ。 でも…ないな…その時、向かい側から人の気配がして立ち止まると 「ああ、ユリア。これから会いに行くところだったんだ」 「こんにちは、ラース」 見知らぬ男性とラースが私の前で立ち止まり、ラースはまた私の手を取るとキスをした。だからぁ、それどっきどきするんだって。 「ユリア、覚えていないだろうから紹介するよ。僕の執事、ポイヤックだよ」 「改めまして、ユリア様。ポイヤックでございます。お元気そうで安心致しました」 執事…彼が本物の執事なら…私は聞きたいことが赤い屋根より高いところまで山積みなのよ。 「はじめまして…みたいでごめんなさい。ユリアです」 「気にすることはないよ」 ラースが持ったままだった手の甲をポンポンと叩いて 「つるつると綺麗な肌だね」 そう微笑んだ。 「あの…ラース…」
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