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「これは…乗り物…?」
「そうだね、カーゴン。どうぞ」
‘知らない?’‘これも忘れた?’と言わずに当たり前に答えてくれるのは嬉しい。お城がある世界の乗り物は馬車だと想像していたのだけれど、言わなくて良かった。もし‘馬車で行くの?’なんて言っていたら‘馬車って何?いつの時代の話?’ってなるかもしれない。
ラースが手を取って座らせてくれたのはゴルフカートのようにサイドはオープンで屋根がある乗り物だけどタイヤが見えない…と思えば…スーッ…
「ぇ…浮いた?」
「カーゴンは静かだよね。10センチほど浮いてるよ…ほら、向かいからも来たよ」
ぅおぉぉ…すっごっ…皆浮いてるよ…カーゴンには一人乗り、二人乗りなど種類があるようだ。今乗っているのは4人乗りだ。他にどんなのがあるのか、街はどんな風なのか、後ろを向いたり、身を乗り出す私を咎めることなくラースは私の腕や肩を押さえて落ちないように支えながらクスクスと笑っている。
「ユリアは1週間苦しい思いをしたあと、少し自分を抑えることはマシになったのか…明るく、好奇心旺盛に見えるね。ますますチャーミングだよ」
「…赤ちゃん返り?」
「実の母上が早くに亡くなっていると聞いているからね。赤ちゃんからやり直したくなった?僕に甘えてワガママ言って振り回してくれたら最高だね」
ラースがそう言って私の肩を引き寄せたので、胸元が開いたドレスから見える胸の膨らみが、目視で分かるほどどくどく動くのできゅっと胸の前で手を組んで隠すように押さえる。でも…ぅがぁぁ…これってマンガとかで女の子がときめいてるポーズのまんまだ…恥ずかしすぎるよぉ…こんなキャラじゃないのに、私…どうなってるの?
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