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私の声にポイヤックさんが運転するカーゴンが止まった。そのポイヤックさんは肩を震わせて‘ぷっ…’と声を漏らしているがかまっていられない。
私は肩にかかったラースの手を物ともせず、カーゴンから降りると
「わぁぁ…ぁああ…」
まだ浮いていたらしく、足元の目算を誤り転けてしまった…はずが…むにっ…小さい爺さんが杖を持たない手と顔を私の胸に埋め込んで支えてくれた。
「ありがとう。門の上に座っていたのに…すごく運動神経いいんだね、爺さん」
ぷはーっと顔を上げながら、手をもみもみと動かした爺さんの手を捻って退かした私に
「ユリアは高祖父に見覚えがあるのか。呼び方は違うようだけれど」
声を掛けながらラースがカーゴンから降りて来た。うん?高祖父?うん?でもこの爺さんはこの世界を別空間から見ていたよ?爺さんもワープ系?
「高祖父はツイリンッヒっていう名だよ。僕たちはツイリン爺って呼ぶんだ。ユリアは二度ほど見掛けたことがあるかな?」
「失礼な呼び方しちゃってごめんなさい。ツイリンおじいちゃん」
「爺さんでええ」
「ははっ…ツイリン爺、今日は話せる日?」
「…ラース…どういうこと?」
「ツイリン爺は僕たちにも謎でね。確かなのは高齢過ぎて年々身長が縮んでいることと名前だけ。ここにいる時もいない時もあるし、いても全く話さない日がある。それでツイリン爺のコピーが6人いて、本人とで7人じゃないかと噂になってるけれど、爺が何も言わないから本当のところはわからないんだ」
「爺さん、カッコいい噂あるんだ…」
「ワシじゃからの。元気そうじゃな、ユリア」
「まあまあ」
「なんじゃ、腹が減ってるんか?」
「…そうなるの?」
「ユリア、食事しながらゆっくり話そう。聞きたいことはもれなく聞いてくれたらいいよ」
「ありがとう、ラース」
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