どきどき

13/23

1396人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ
しばらく考え込む私を急かすことなく、私の両隣の二人は紅茶を飲む。だが、視界に入っている爺さんだけは忙しなく起き上がったかと思うと、高速ラジオ体操のように短い手足と首を動かした。 「あれ…何やってるの?」 「どこも満足に動くかの確認だと思う。寝起きによく見るよ」 滑稽な動きに笑いが漏れるが、ラース達は見慣れているらしい。ぇ…最後に爺さんは両手の10本の指を‘もみもみ’と宙で動かして、そのスムーズな動きに‘良好’とばかりにコクコクと頷いた。 「何とも言えない動きだけど…元気そうだね…」 「そうだね。もう人の域を超越していると僕は思ってるんだけど」 「私達の方が早く死ぬ?」 「だと思うよ?ツイリン爺は永遠に死にそうにない」 「人それぞれ…」 「それが自然なこと」 「うん…執事学校での身の回りのお世話って…」 口を開いている勢いのまま、私は聞きたいことを言葉にした。 「洗髪とかも?」 「それは全員ではありませんが、調髪を履修すれば学びます」 選択科目ということか… 「ユリア、ウィルは洗髪が上手だって言ってたよね?でも、そこに何か問題があった?」 「…ううん…お手伝いさんでなく執事がするんだって驚いたんだけど、アニーラ達も‘お願いする’って言ったし、お父様やラースも聞いていて不思議でなかったようだから…履修も出来るって今も聞いたし普通なんだなって」 「女性に仕える場合でも、体にベタベタと触れることを除いてお世話させていただくことはあり得るでしょうが、気になるようでしたら洗髪もユリア様が女性にして欲しいとご希望さ…」 「体にベタベタと触れることを除いて…」 ポイヤックさんの言葉の途中だがガーン…と頭に響く言葉が…ベタベタと触れるどころか全身をもみもみ、なでなでして、さらにすごいマッサージをするらしいんですけど…?
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1396人が本棚に入れています
本棚に追加