びゅーん

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「ここに送られてきた者は皆が全裸じゃ。あの世へ行くにも、もう一度生きるにも生まれたままの姿でというわけじゃ」 「で…その手は?」 「触り心地を確かめておっただけじゃ。大きさも張りも弾力も申し分ない。ユリアも確かめてみなさい」 爺さんはあっさりと手を下ろして、私がそっと胸に触れるのを見ている。 「おっきい…」 「薬が効いたんじゃな。他の臓器にはダメージが大きくてあの世の手前におるわけじゃ。手を動かして確かめてみなさい」 爺さんはそう言うと、喉が渇いたのかゴクリと唾を飲み込んだようだ。 「わ…ふわっふわ…ぷるんぷるん…こんな風に揺れるんだ…これが私のもの?」 「そうじゃ。先端の大きさも完璧でピンク色の濃さもいい。指先で確かめてみなさい」 「…こんな風に摘まめるなんて夢のようで…嬉しい」 今度ははっきりお爺さんが唾を飲み込んだのが分かり爺さんを見ると、何だか慌てた爺さんがゴホゴホとむせた。 「大丈夫?」 そう言いながら起き上がって台の上で座ると、胸の重さを感じ胸元を見下ろす。重さを確かめるように胸を持ち上げてみた私に 「あの世へ行くか、この赤いとんがり屋根の城で生きるか選べ」 爺さんは怪しげな本を私に見せた。
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