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「廊下の突き当たりに執務室があるんだ。そちらへも案内するよ」
ラースに手を引かれて廊下を進むと
「ラース様、ユリア様」
後ろから女性の声がして二人で振り返る。
「ユリア様、お久しぶりです…ぁ…ドナと申します」
私と同世代であろう、白エプロン姿の女性が頭を下げる。
「…ユリアです。ドナさん…もう覚えました。ごめんなさい」
「ありがとうございます、大丈夫です。ユリア様の滞在中、身の回りのお世話はわたくしがさせて頂きます。どうぞよろしくお願いいたします」
もうお風呂は一人で入ろうと思うけれど、準備や片付けの手順がわからないし、ドレスによっては手伝ってもらわないと着られないだろう。
「お世話になります。お願いします」
「お任せください。今は何かお手伝いはございませんか?」
弾んだ声で聞かれて、何かお願いした方がいいのかと思うくらいだけど何も思いつかない。ゆっくり首を横に振ると
「フルーツティーはいかがですか?」
さらに弾んだ声で明るく聞かれる。フルーツティーが分からなかったけれど
「はい…お願いします」
と答えるとラースが
「執務室へ運んで。ポイヤックにも執務室へ来るように伝えてくれ」
そう付け加えて再び歩き始める。
「どちらもかしこまりました。ユリア様…今日もお綺麗です」
と聞こえて…うん?ラースを見上げるとニッコリと笑っている。
「ドナはユリアのファンらしいよ。さっき聞いたんだ。僕のセリフをドナに言われてしまったね。ライバルが現れたってことだ」
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