ふわふわ

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「ごめ…んっ…」 パッと手を放して体を離そうとしたけれどラースの腕は緩むことなく 「大丈夫だよ、ユリア。ゆっくりやり直してみて」 さらに甘く耳に溶ける音色を放つ。私は同じ失敗を繰り返さないように手のひらをパーッとしっかり広げてから、ラースの背中に手形をつけるように‘ベタッ’‘ベタッ’と片手ずつ張り付けた。 「成功…」 「うん…大成功だ、ユリア」 「…ふぅ…」 「緊張した?」 「スッゴク」 「僕も緊張してる…ユリアにドキドキさせられてる」 「…私が…ドキドキさせてる?」 「間違いないね。ユリアは魅力的だから」 もう応えるのは諦めた。頭が真っ白で記憶も頼りにならない。ただ自分のドキドキを全身に感じ、ラースのドキドキを右の耳から脳に届けながら、耳が熱くなるのを感じずにはいられなかった。 コンコン、コンコン… 「ポイヤックです」 「どうぞ」 「ぇえええぇっ…放してっ、離れてっ…」 「ユリア、慌てることはない。僕たちが何をしていようが使用人は口出ししないし、口外もしない。そうでないとずっと人目を気にして生活しないといけないよ?」 「ここまでのご報告をさせて頂きます」 「…ポイヤックさん…普通…」 「はい、ユリア様。主人の抱擁ごときでは何とも…接吻されていようがラース様が報告と言われれば、正しくご報告を致します。それ以上もご報告に影響はございませんが、きっとラース様がユリア様のそのようなお姿は独占したいものと推察致します」 抱擁、接吻、それ以上のお姿…この人は淡々と何てことを言うんだ。っていうか… 「ラース…放して」 「残念だけど、座ろうか?」 「失礼致します。フルーツティーをお持ちしました、ユリア様」 ギリギリセーフ…抱擁タイムは終了ほやほやだ。
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