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「応接室へお願いします」
ポイヤックさんの声がはっきりと聞こえるところから、私の部屋の前で大きな声で言っているのだと分かる。アニーラとライラも私とは違う興奮状態なのだろう。
「私達もここへ泊まるわ。部屋を準備して」
「申し訳ございませんが、本日はもうご用意いたしかねます」
「おじ様に会わせて」
「ご不在です」
「おば様は?」
「同じくご不在です」
「ラースは?」
「職務中でございます」
「ユリアは?」
「お休みになっておられます」
「ユリアがゲストルームを使っているのね?」
人の気配が立ち去り、私はティッシュで鼻を押さえたままラースを見る。
「父達も居るけれどね。建物が完全に分かれていて用がなければ会わない。あちらの建物にはゲストルームも多いけど僕の方は二部屋だけ。そこを見に行ったんだろうね」
「ここは…違うの?」
「ここはユリアの部屋だから違う」
「…準備が出来ていたってこと?」
「そうだね…ユリアはきっと僕のことが好きだと思っていたんだ。でもどこか遠慮が見えて…」
ラースはそっと私の手を取り鼻血が止まっていることを確かめると、サイドテーブルにあるお洒落なピッチャーからグラスに水を入れ、ティッシュと交換するように私に持たせてくれた。
「絶対に僕の想いを届けたいと願いながら、ここにユリアの部屋を…そうだね…半年くらい前に整え始めたんだ」
めちゃくちゃ愛されヒロインみたいなシチュエーションなんですけど…私は鼻血によって失われた水分を補給するようにごくごくとグラスの水を一気飲みしてから、ヒロインらしくラースを見つめ
「ありがとう、ラース…嬉しい」
と彼の手にグラスを持たない手を添えた。画になる完璧ヒロインスタイルね。
「あ…まだ鼻血が止まってなかったね。はい、ユリア…もう一度ティッシュ」
ガーン…もう何も言うまい。
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