ふわふわ

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「ユリア様、お湯の準備が整いました。どうぞ」 「ありがとう、ドナ」 そう言いバスルームへ向かう私の髪を一束、指で掬ったラースが 「あとで僕の部屋に来て」 と髪にキスをする。せっかく止まっている鼻血が心配になってドキドキしている場合でない私の隣に来たドナが 「ラース様、湯あみのあとはディナー仕様、もしくは寝室仕様…どのように仕上げさせて頂きましょうか?」 と膝を折る。 「僕の部屋で食事するからユリアのリラックスできるようにして。ドナ、今だけでなく、これからずっと僕よりユリアの意向を第一に出来ないなら担当は変える。僕はユリアが何よりも大切だから、そこを間違えないように」 「承知致しました、ラース様。ユリア様のご希望を第一に力を尽くして参ります」 「硬くならず、仲良くしてくれれば一番だね。じゃあ、ユリア…待ってる」 やっぱり愛されヒロインのようだけれど、鼻血をたらーんと出すヒロインなど見たことない。しかも何度も…その前には吐きそうな泣き方で失神しているんだから…恥ずかしい。 「ユリア様、どうぞ」 「あ…ありがとう、ドナ。一人で入れるよ」 「では、ハニコムがこちらで…」 「ハニコム?」 「古くから天然のスポンジとされてきた海綿の中でも、ふわふわの柔らかさが特長のハニコム種です。水で濡らすと柔らかくなり、きめの細かい泡が立ちます。天然素材なのでお肌が弱い方にも安心ですよ」 ウィルが手でくるくると体を撫でればいいって言ってたのはデタラメだったのか。 「洗髪にはこちらをご使用下さい。その後のお支度はどうされますか?」 「あぁ…簡単なドレス?部屋着のような…」 「かしこまりました、ユリア様。準備のためお部屋におりますのでいつでもお声掛け下さいませ」 こうして一人でお風呂に入ると、サーラはウィルがユリア嬢を好きに出来るように動いていたのだと、何となく分かる。母親の顔も知らぬユリア嬢がそんな目に合っていたのかと思うと、私がユリア嬢の分まで幸せに生きたいと思った。
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