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桜の木の下で立ち止まった僕は文葉の正面に立って話を始めた。
「僕は東京の大学に進学することになったんだよ!
僕は文葉とまた会いたいから、僕と付き合ってもらえないかな?」
その時の文葉は僕の真剣な表情を見て、
「えっ…」
とつぶやいて少し沈黙してしまった。
少しすると文葉が、
「ごめんなさい!
先輩とはお付き合いできません。
私には好きな人がいます。」
と申し訳なさそうに返事をしてくれた。
とっさに僕は、
「そうか、好きな人がいるんだね!
ごめん、僕のことは忘れて…」
と言葉を返した。
「部活、頑張ってね!」
悲しい気持ちを抑えて僕が言葉をかけると文葉が、
「はい、もちろん頑張りますよ!
先輩もお元気で…」
と笑顔で元気に返事をしてくれた。
「それでは、部活に行きますね!」
文葉が僕に軽く会釈して、振り向いて部室に向かって歩き出した。
僕は離れていく文葉の後姿を見つめながら、
(文葉とはもう会えなくなるんだな…)
と漠然とした思いと悲しみが込み上げてきた。
涙をこらえるために上を見て桜の花を見ていると、桜の花びらが1ひら舞ってきて涙にぬれた僕の頬に舞い落ちた。
中学の卒業式の日にも同じようなことがあったことを思い出して、僕はこの光景を中学の時の場面に重ね合わせていた。
この日から僕は、桜の花を見ると失恋の場面が思い出されて悲しい思いをするのだろうと感じた。
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