アホの子も葛藤する

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 ヨシュアは、7の下半身を一瞥すると「歩く凶器だな」そう言って、スーツの襟元を緩めた。うっとりと見惚れているセフレ君に顔を近づける。今にもキスしそうな距離でピタリと止まって、微笑みかけた。  モヤッとした感情が7を襲う。  ――ヨシュア様が別の人とキスしてるの、見たくねえな。    7の不穏をよそに、突然しゃがみ込んだヨシュア。彼は、セフレ君の尻をかき分けると皺を観察しだした。 「あれ? 本当に縦になってるな……君、ちょっと良いかな。こうなるとほぐさなくても気持ちが良い、で解釈は合っているだろうか?」 「あっ、え……え?」 「ヨシュア様、お願いだから止めてください。皺に取り憑かれてますって! 慣れるとそうなるって話を誤解してます!」  振り返ったヨシュアは立ち上がると、ムスッとした顔で7とセフレ君を見た。 「わざわざ、こちらから出向いてやったのに。パトロールを放棄するとは何事だ。探させてみたら、こんな場所で他の男と」  繁華街の路地裏ゆえ、ヨシュアの表情が今ひとつ分からない。しかし、その口調はどこか子供じみていた。玩具を取られて機嫌を損ねている子供のようだ。  ぽかんとしているセフレ君。その唇を出し抜けに奪ったヨシュアは、ねっとりした性格丸出しに舌を吸った。そうして、とろけたセフレ君をこれまた唐突に突き放すと、7の腕を強引に引っ張った。 「すまないね、コイツは私のモノなんだ。君は他の相手を探してくれ」  そう言って笑うヨシュアは、憎ったらしほどのイケメンであった。  暗闇でも一目で美しいと分かる。そんな顔からウィンクまでされて、頷かない者がいるだろうか。セフレ君は状況が飲み込めないまま、惚けた顔で首を縦に振ってしまった。 「ちょっと! 見捨てないでくれよ! 俺はタチだろ?」
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