132人が本棚に入れています
本棚に追加
ご馳走、現る
アメリカは西海岸。ダウンタウンにあるパブ。週末と言うこともあり、若者達でごった返していた。店内はロックミュージックが流れ、煙草の煙が漂う。
その中でも一際目立つ集団が、ビリヤード台を占領していた。
州警察の警察官達だ。仕事を終え、私服姿でビール片手に笑っている。男達は若く、鍛え上げられた肉体の持ち主ばかりだった。
「7。ホラ、あのジュークッボックスの前に居る女達。お前の事を見てるぜ」
「あ?」
ビリヤード台に座り、コーナーポケット側の球を見ていた男が顔を上げる。7。同僚からそう呼ばれた青年は、集団の中でも特に目立つ容姿をしていた。
185cmは優に超える上背。細マッチョよりも少し厚い、胸板と二の腕。そして、翡翠の花と形容するに相応しい緑色の瞳と、蜂蜜色のブロンド。
振り返った7は、お世辞丸出しの笑顔を女性達に送った。直ぐに視線をコーナーポケットに戻す。隣にいた同僚が『そうじゃねえよ』と肘でつついてきた。
「なあ、7。今日は何曜日だと思う?」
「回りくどい言い方すんなよ。ナンパなら自分でしてこいって」
肩に腕を回した同僚は、7の瞳に銃口を向ける真似をした。少しばかり酔いが回りすぎているらしい。ヘラヘラ笑う同僚を睨んだ7は、彼からビールジョッキを奪ってやった。
「あ、何すんだ。返せって」
「嫌なこった。ほら、女のところへ行ってこいよ」
それまでビリヤードをしていた同僚達が、二人の声に反応した。ゲームを中断して、7と同僚の先にいるジュークボックスを見だす。そうして『今夜のお相手は決まり』と言いたげに、色のある視線を互いに投げだした。
軽快なロックミュージックが音量を上げていく。
その時、上官を引き連れた見知らぬ青年が現れた。
最初のコメントを投稿しよう!