ご馳走、現る

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ご馳走、現る

 アメリカは西海岸。ダウンタウンにあるパブ。週末と言うこともあり、若者達でごった返していた。店内はロックミュージックが流れ、煙草の煙が漂う。  その中でも一際目立つ集団が、ビリヤード台を占領していた。  州警察の警察官達だ。仕事を終え、私服姿でビール片手に笑っている。男達は若く、鍛え上げられた肉体の持ち主ばかりだった。 「(セブン)。ホラ、あのジュークッボックスの前に居る女達。お前の事を見てるぜ」 「あ?」  ビリヤード台に座り、コーナーポケット側の球を見ていた男が顔を上げる。(セブン)。同僚からそう呼ばれた青年は、集団の中でも特に目立つ容姿をしていた。  185cmは優に超える上背。細マッチョよりも少し厚い、胸板と二の腕。そして、翡翠の花と形容するに相応しい緑色の瞳と、蜂蜜色のブロンド。  振り返った(セブン)は、お世辞丸出しの笑顔を女性達に送った。直ぐに視線をコーナーポケットに戻す。隣にいた同僚が『そうじゃねえよ』と肘でつついてきた。 「なあ、(セブン)。今日は何曜日だと思う?」 「回りくどい言い方すんなよ。ナンパなら自分でしてこいって」  肩に腕を回した同僚は、(セブン)の瞳に銃口を向ける真似をした。少しばかり酔いが回りすぎているらしい。ヘラヘラ笑う同僚を睨んだ(セブン)は、彼からビールジョッキを奪ってやった。 「あ、何すんだ。返せって」 「嫌なこった。ほら、女のところへ行ってこいよ」  それまでビリヤードをしていた同僚達が、二人の声に反応した。ゲームを中断して、(セブン)と同僚の先にいるジュークボックスを見だす。そうして『今夜のお相手は決まり』と言いたげに、色のある視線を互いに投げだした。  軽快なロックミュージックが音量を上げていく。  その時、上官を引き連れた見知らぬ青年が現れた。  
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