ご馳走、現る

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 青年は、ダウンタウンのパブにはおおよそ似つかわしくない容姿をしていた。  年の頃は20歳くらいだろうか。深海を思わせるブルネットが、肌を病的なまでに白く見せている。そして何より。サファイアそのものと言って良い、大粒の瞳がとにかく目立った。 「誰だ、アレ?」 『週末だってのに、上司と鉢合わせかよ』一気にテンションの下がった若者達。そんな中を一人、素っ頓狂な声を上げた者がいた。一際目立つ美丈夫こと、(セブン)である。 「お前、知らねえの? キンドリー州知事のご子息だよ」 「特別顧客に息子なんていたのかよ」 「バッお前、ここでその名前は出すなって!」  特別顧客とは、既得権益を佃煮にしたような組織の名称である。この作品は番外編なので、詳細の説明は省く。とにかく、闇の組織なのでペロッと口にするのは御法度なのだ。  その言葉に反応した青年が(セブン)に視線を移した。ラグジュアリースーツの胸元に手をやる。(セブン)の足下からつま先まで眺めた後、翡翠色の瞳を捉えた。 「ヨシュア様、飲み物はどうされますか?」 「ああ……ワインはあるかな。私はビールがあまり得意ではなくてね」  (セブン)から目を逸らす事なく、ヨシュアと呼ばれた青年が答える。薄い唇で微笑みかけられた時、(セブン)は恋に落ちた。  ――どちゃくそ良い男じゃねえか。うわあ、抱き潰してえ。  (セブン)はゲイである。特に隠した事もなかったが、同僚は何故かその事に気づかなかった。なので、ガールハントとなると声を掛けられる。彼はガールハントよりも、同僚の鍛え上げられた尻を見ている方が好きだった。  あんな格好、こんな体位、そんな鳴き声。妄想で同僚を犯す時間が溜まらない。  そう、彼は生粋のバリタチであった。
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