アホの子も葛藤する

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アホの子も葛藤する

「この俺がケツで気持ち良くなるなんて、あり得ない! 名誉毀損だぞ!」 「……何言ってんだよ、7。パトロール中だぞ。しかも無線で喋る内容か、ソレ」  無線機を持っていた事に気づいた7は、ダッシュボードにそいつを叩きつけた。「ヂグショー!」突っ伏して、まだブツブツと文句を言っている。同僚の警察官が、呆れて煙草に火をつけた。  ヨシュアによって無事、女の子にされてしまった7。自宅アパートで目覚めた時『気持ち良かったー!』とホクホク顔で帰宅した自分を恨んだ。  ――何が気持ち良いだ。いや、気持ち良かったけど。  同僚は大柄な筋肉美を見て、女王様に分からせをされたのだと勘違いしていた。構図として、あながち外れていないのが悩ましい。 「実はさあ、俺もマゾなんだよ。で、その女王様はどの店に……っておい! 7、何処へ行くんだよ。勤務中だぞ!」  同僚が声を荒げた時、7は既にパトカーを離れて一人で歩き出していた。夕暮れのダウンタウン。ネオンが灯りだした街の中を歩いた7は、とあるダイナーの前で足を止めた。 「いらっしゃい! あれ? 7じゃない」  声の主は7のセフレだった。小柄で美しい顔立ち。テンプレの王道ど真ん中をゆく、ネコちゃんである。彼はカウンターに座った7に、コーヒーとドーナッツを出した。 「お前、仕事は何時まで?」 「もう上がりだけど。もしかして、お誘い? タイムカード切ってくるね! 待ってて」  10分後、二人はダウンタウンの路地裏にいた。    セフレに対して紳士な7である。よって、スラム街馴染みのゲイバーでは、どちゃくそにモテた。そんな彼が外で、というのは極めて珍しい話である。  想定外のシチュエーションに、セフレ君が興奮……いや、困惑していた。 「あんっ。こんな場所じゃ恥ずかしい、俺」 「なあ、俺はタチだよな? 俺って、ネコちゃんからモテるよな?」  
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