健全なデート

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 人気のないロビーでも、ヨシュアは楽しそうにしていた。手を叩いては、汚い絨毯を歩き回り、過去の映画ポスターを眺めている。 「ポップコーン、買ってきました。入りましょう。映画、始まってますよ」 「映画デートにポップコーンっていうのは、本当なんだな。7は、こういうデートもするんだ」 「そりゃあ……一応、これでもモテますから」  ヨシュアが聞きたかったのは、あくまでポップコーンの事だけだったらしい。白けた目で7を見やった彼は、サクッと上映ホールに向かっていった。  時代は80年代である。寂れた映画館でする事と言えば、大体の想像はつく。そこいら中で、カップルがズンドコベロンチョの真っ最中であった。  さっきまで、お外でナニしようとしていた7に照れる道理はない。  ないのだが。 「なんだ。映画館というのはセックスをする場所……」  唐突に大声を出したヨシュアの口は、流石に塞いだ。何が悪いと言いたげなヨシュアが、適当な座席に腰掛けた。ラグジュアリースーツについた埃を払う。そうして長い足を再び組むと、ポップコーン片手に映画を観だした。  映画は『まだホラーを選んだ方がマシだったんじゃないか』というレベルのつまらなさだった。直ぐに飽きてしまった7が欠伸をかみ殺して、ポップコーンを頬張る。    スクリーンを観たままのヨシュアが、そう言えばという感じで話しかけてきた。 「お前、アダムの子じゃないってのは本当なのか?」  アダムの子とは、作品本編で人身売買された子供達を指す。7の所属する州警察は、闇の組織が牛耳っている。その中でも、トロイと呼ばれる傭兵部門に仕切られていた。  トロイは、その殆どがアダムの子で構成されている。 「あー、そうです。人身売買されたヤツらの事っすよね、アダムの子って。俺は去年まで、スラム街で地下格闘技をやってたんで」 「じゃあ、7って名前は」
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