ご馳走、現る

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 州警察の中に闇の組織がある都合上、同僚と肉体関係を持つのは控えてきた。相手は生まれ育ったスラム街に行けば幾らでも居る。  しかし今の(セブン)は組織の頂点、その子息に激しく欲情――いや、恋をしていた。 「あっ、ちょっと。何処へ行くんだよ、(セブン)」 「()()」 「ハァ? ケツって何だよ。意味わかんねえ……」  ヨシュアという美しい青年を『ケツ』と呼んでしまった(セブン)。若干アホの子である彼は、そのままフラフラと歩いて行ってしまった。 「初めまして。俺、(セブン)って言います」  上官達が警備する中を、(セブン)がずいっと割り込んだ。呆けた顔で唐突に自己紹介をする。 「初めまして。君は州警察なのかな? 私はヨシュア・キンドリーだ。(セブン)って珍しい名前だね」 「はい、スカウトされて警官になりました。俺、スラム街で育ってるんで。名前は一応、戸籍を買って貰ったときに……」 「ヨシュア様に向かって何を喋ってるんだ、お前は。飲み過ぎだろう、仲間の所へ戻れ」 「まあ良いじゃないか。私は美しいものが好きでね。こっちにおいで、(セブン)」  ヨシュアの言葉に白髪交じりの上官達が軽く咳払いをした。つまりはヨシュアもゲイであると察したのである。「ここは若い者達に任せましょう」等と訳の分からない台詞を吐きながら、サッと背中を向けて素知らぬ顔をしだした。  甘い言葉を掛けられた(セブン)は、それはもう嬉しそうな顔をしてヨシュアの隣に立った。 「俺も美しい人が好きだ。気が合いますね」 「君の髪に触れてもいいかい? ハチミツみたいだ」
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