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近づいて祈るような気持ちでよく見ると、子猫のお腹がかすかに上下していた。
生きてる……!
震えてしまう手を伸ばして、そっと子猫に触れる。
仔猫は目を細くあけて、海斗を見た。
そして、消え入りそうな声で「ミゥ」と鳴いた。
でもすぐに力無く目を閉じてしまう。
海斗は震える手で、慎重に慎重に仔猫を手の平にすくい上げ、持ってきたタオルでくるんだ。
カラスにでも攻撃されたのだろうか?野犬?
でも、そうではないということを次の瞬間はっきりと知り、海斗の全身に鳥肌が立った。
--子猫のそばには、血に塗れたハサミが落ちていたのだ。
子猫の首の辺りに大きく切り裂かれた傷があり、そこから今も血が流れ出している。
こんなことをするのは人間しかいない……!
そう思った瞬間、身体の中をどうしようもない怒りが突き抜けるのを感じた。
誰が、こんなひどいことを?
怒りでめまいがした。
昼間連れて帰っていれば、この子猫はこんな目には遇わずに済んだんだ……!
どれだけ後悔してもし足りなかった。
--でも、今はそれよりも助けられるものならこの子猫を助けたいと、海斗は強く思う。
パーカーのファスナーを開けてその内側に子猫を抱き、思いつく一番近い動物病院に走った。
走りながら、心の中で何度も子猫に謝った。
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