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 始まりはなんだろう。  彼女に出会った入学式か。それとも、何も言わずに別れた卒業式だろうか。  でも、本当はわかっている。狂い始めたのは弟の結婚を知ってから。  樋口朝陽の2つ下の弟は、5年付き合った彼女と結婚をし、今年式をあげる。  その人は言った。 「朝陽には、弟の結婚式に呼べるような相手なんていないんでしょ?」  どういうシチュエーションでそんな話になったかはよくわからない。しかし、弟の婚約者にそう言われて、朝陽は深く傷ついたのだ。 「俺にだって彼女はいる」 と反論したものの、 「どうせ中途半端にしか付き合っていないんでしょ?」  彼女の言葉に、またまた心に雷撃を受ける。  相手が朝陽を痛めつけようとしていったわけではないことが、また傷をえぐる。  本当のことを言い当てられてしまった。  これから義理の妹になるその人は、朝陽の中学の同級生で、初恋の相手だった。 「中学から好きな人が同じやつと一緒にするな。こっちは大人の恋愛をしてきたんだよ。今度彼女を連れてきてやるよ」  朝陽はカッコつけて言い返してみたものの、苦々しい思いに奥歯を噛みしめる。中学から好きな人が同じなのは朝陽も同じだ。 (なんで瑠衣なんだよ)  弟の婚約者が何故、瑠衣なんだ。  何故、初恋の相手なんだ。  そして、内心猛烈に焦っていた。  彼女がいることは嘘ではない。ただし、3人いたから。
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