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四月
4/1
四月になった。
旅立ってからたった四日で月が変わるなら、四月一日からのスタートにした方が、キリがよくて格好もついたかと思ったが、形から入りたがるのは僕の悪い癖なので、これでよかったはずだ。
昨日から決めていた通り、今日は北へと進んだ。北といっても、関東地方を北上しているだけで、まだ群馬県中部までしか来ていない。
銭湯つきのパーキングエリアが想像以上に便利だったので、今回もその条件で駐車場所を探して「道の駅ふじみ」に決めた。
銭湯の名前が「富士見温泉見晴らしの湯」というだけあって、ちょっとした山の中腹に位置する道の駅だ。
夜になると駐車場から夜景が見えた。
夜景を見たのは初めてだった──夜景なんてものは恋人でもいない限り、そうそう見に行く機会なんてない。
だから、ここから見える夜景がどのくらい綺麗かと問われても、他の比較対照を知らないので、正確に答えることはできない。
それでも、こんなに綺麗な景色が身近にあったのかと衝撃を受けるくらいに美しかった。
夜の闇の中、街が宙に浮かび上がっているかのようだった。
大袈裟だと思うかもしれないが、大人になるまで一度も夜景を見たことのない人間が初めて夜景を見たら、きっと僕と同じ反応をすると思う。
それほどまでに幻想的な景色だった。
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