チリザクラ

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 中学時代。  通学路の途中にある小さな公園。  ブランコと滑り台、鉄棒だけがあって、時々親子が遊んでる場所。  そこが僕たちのデート場所だった。  デートって言っても、付き合ってはいないし、ただの片想いだったから、そう言っても良いのか分からないけれど。 「クッキー作ってきたんだけど、食べる?」 「うん、食べる」  あまり気持ちを言うのが上手くなかったあの時の僕。「美味しい」って素直に言えば良かったなぁ。珍しく髪の毛を結んで来た時も「可愛いね」って、「一緒にいる時間が楽しいよ」って……。全部言えば、今とは違う関係でいられたりしたのかな。  ここの公園には一本の桜の木がある。  薄いピンク色の花が咲く桜。  桜が咲く時期には、目を輝かせながらキミは「桜綺麗だね」「一番好きな花なんだ」って。キミが好きな桜だから、僕も桜が好きになった。  懐かしいなぁ。  ここの公園で最後にキミと過ごした日から、もう五年経ったのかぁ。   堂々と立っている一本の桜の木を見つめた。  キミを思い出してしまう。  キミは、まだあの人の隣にいるのだろうか。  
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