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「いやぁ先生、今回の作品も素晴らしかったですよ!」
「とんでもない……担当の君が添削してくれたお陰に過ぎないよ」
「そのお言葉、光栄の極みですね……僕は先生の処女作、『金の卵を産む鵞鳥』を読んだ時、この人は神かと思いましたからね……こうやって一緒にお仕事をさせて頂けるなんて夢のようです」
「そんなに持ち上げられると、なんだかむず痒いよ」
「だって、あの作品は先生が遅咲きながらも編集者から小説家に化けた……まるで雛鳥が卵の殻を突き破ったような作品じゃ無いですか!」
「雛鳥……ねぇ」
「その作品で先生は賞を総なめし、実力を世に知らしめたのです!」
「褒めてくれてありがとう。純粋に嬉しいよ……あぁそうだ、次作の原稿を書いたんだけど」
「次作!早く読みたくてウズウズしますね!!」
「ふふっ……それはそれは。原稿は棚の上にあるから持っていってくれるかい?」
「あっ、これですね?……先生は律儀ですよね。この便利な時代でも万年筆と原稿用紙で書いているなんて」
「……癖なんだよ」
「なるほど!なんか素敵ですね……あれ、このペン立てに入っている白い物って……?」
「ん?……あぁ、それは僕の『勝負下着』ならぬ『勝負ペン』さ。……このペンを握ると、途端に言葉が湧いてくる」
「では、『金の卵を産む鵞鳥』の時も?」
「勿論!……まだあの時、このペンはもっと太かったけどね」
「そうなんですね……なんか、その……一瞬指に見えたので少し驚いてしまって……」
「良い想像力だ。……君もいつかは良い作家になれるだろう」
─fin─
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