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授賞式の当日、女はこの上なく着飾っていた。
帷のような黒髪は器用に編み上げられ、白い肌によく映える頬紅をつけた女は、上品な紺のドレスに身を包む。
僕は女に見惚れたが、女は意に介した様子もなく笑う。
その瞬間、世界が止まる。
そんな事はつゆ知らず、女は支度を整えると玄関で靴を選び出した。
──あぁ、哀れな鵞鳥……。
僕は女の背後に立つと、止まった蚊を叩く瞬間のように目を光らせて、女の首を両手で掴んだ。その瞬間、僕の頭にはあるイソップ寓話が浮かぶ。
──『ある日農夫は飼っている鵞鳥が黄金の卵を産んでいるのを見つけて驚きました』
酸素を求めて鯉のように口を何度も動かす女は、あまりの出来事に目を剥いた。
──『それから毎日、鵞鳥は1日に1個ずつ黄金の卵を産み、卵を売った農夫は金持ちになりました』
ジタバタと暴れる女は手や足を壁や床にぶつけながら生傷を作って僕を見る。
──『しかし農夫はいつしか1日1個しか卵を産まない鵞鳥に欲を出し、きっと鵞鳥の腹の中には金塊が詰まっているに違いないと考えるようになるのです』
その表情は、今までで一番女が生きている実感の湧く鮮明な色を灯していた。
──『そして──欲を出した農夫は鵞鳥の腹を切り裂きました』
僕は段々と体の力を緩めてゆく女の腹に馬乗りになった。無骨で日に焼けた僕の指に全体重を乗せ、女の細くキメ細かい首筋に食い込ませると、やや暫くしてからゴキリと鈍い音を立てる。
──『ところが腹の中に金塊などは入っている筈もなく、その上鵞鳥は死んでしまいました』
女は糸が切れた人形のように動かなかった。
涼しげな目元は涙と恐怖を滲ませ、いつも品良く結んでいる唇からは、はしたなく涎が垂れている。
僕は馬乗りのままへたれ混むと、自制の効かなくなった竿を力無い女の手で撫でた。
そう、この女は僕にとって完璧すぎたのだ。
早々に白濁を吐いたものの、やっぱり一度で治らなかった僕は、女のドレスをビリビリと破り下着をずらして、僕を蜜壺に埋めた。
締まりの無い穴に自身を挿れるだけの行為はもはや自慰とそう変わらない筈なのに、僕は行き場の無い熱を滾らせては何度も吐き出す。
女の体とドレスに水溜りが出来上がった頃、僕は昨日準備しておいた鞄を漁って、ペティナイフを手に取った。
形の良い胸の真ん中、鳩尾あたりにナイフを突き立てた僕は、固唾を飲んで女の柔肌がナイフを咥える所を見守る。
綺麗に真っ直ぐ引かれた切り口からは女の唇よりも赤く、林檎のように熟れた血が涙のように伝う。
僕は彼女の腹の中を少しの抜けの無いように調べた。
勿論金塊が埋まっているとは思えない。でも、腹の中には少しばかり女の性根がある、とも思った。
滴り落ちる血液は女の考えを体中に運び、それを指に乗せて言葉を紡ぐ。
女の血は赤く甘かった。
口の中に広がる鉄と恨みが混ざった様な味は、僕の脳をヒリヒリと麻痺させる。
そんな事を考えるだけで背中がゾクゾクと震え、今日だけで何度吐いたかも忘れた体液を女の開いた内蔵にぶち撒けた。
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