41人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
「千年桜が咲いたら、お終いだってのに暢気な奴らだ」
「それって、どういう意味?」
ハッとするランマだが、時既に遅し。
目の前には、一見して集落の者ではないと分かる若い女性が居たのだ。
栗色の髪を陽光に透かし、好奇心旺盛な瞳で貫くように視線を向ける。
「お前に話すことはない」
「君は誰とも話さないって有名よ」
「俺は忌み子だ。話してたら、お前まで村八分にされるぞ」
「お生憎様。うちはここの者じゃないので平気よ」
「ぐっ……」
「いつも不機嫌な顔して。話したいことがあるなら、お姉さんに話してごらん」
「この顔は生まれつきだ。お姉さんってお前幾つだよ」
「花も恥じらう二十一よ」
「タメじゃねえか」
「ほら、もう随分話しちゃったわね」
両親を失ったランマにとって、話し相手といえば剣術の師匠シダレだけだ。
同年代の友達もいない。女性など尚更だ。
彼の心を開かせる不思議な魅力を持つ女性は、ヨシノと名乗った。
最初のコメントを投稿しよう!