3 不思議の国の…ざしきわらし?

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「仕事が忙しくて疲れてるのかなぁ……」  独り言をつぶやいてぬるくなったコーヒーを喉に流し込んだ。  ――でも。  ぎこちなく、後ろを振り返ってみる。  軽く整えたベッド。不安そうな顔が映る姿見。 (お化けなんているわけないじゃない)  一人暮らしの部屋に他人の気配なんてものがあるはずがない。 (まさか、泥棒……?)  芽生えた疑問はそっと刈り取った。  流しにカップを置いて視線を滑らせたのは――冷蔵庫のゴミカレンダー。  13日の火曜日。今日は燃えるゴミの日だ。  夏場はこまめに捨てなくてはならないから面倒くさい。  時計を振り返ると――時刻は8時。  そろそろ出掛ける時間だ。慌てて身支度を整えてゴミ袋をひっつかむ。  カギを取ろうと手を伸ばして――眉根を寄せた。 「はぁぁぁんっ?」  素っ頓狂な声が出てしまったが――カギが、ない。  床に落ちてもいないし、カバンの中にも入っていない。 「こんな時に限って……!」  思わず怒りのスイッチがオン。  このままではいつもの電車に乗り遅れてしまう。
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