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口を尖らせる茉莉に子どものような笑顔を向けて楽しそうに笑う。
「そういえば河野さんはお盆は実家に帰るんですよね？」
ゴミ袋にカラス除けネットを被せながら問う。
「そうなんです。河野家恒例のホタル取り競争です。去年は兄貴に負けちゃったけど、今年はたくさん捕まえて絶対一番になる予定です」
景品はなかなかの本気モード。優勝は金一封か限定販売のお高い純米酒。
河野はもちろん酒が目当てだとうれしそうに白い歯をのぞかせる。
親戚一同で虫取り――なんだかほほえましい。
「茉莉ちゃんは残ってバーベキュー大会でしょ？」
お盆の帰省を中止して寂しく部屋の片づけをするつもりだった。
「深山さんがここは高台だから花火が綺麗に見えるって教えてくれて、そこから盛り上がって花火を見ながらバーベキューをしようって」
お盆にやることが片付けと知った深山と鬼崎が計画してくれたのだ。
「花火にバーベキュー。夏らしくていいですねぇ。僕は不参加ですが労働力を寄付しておきますから、茉莉ちゃんは遠慮なく楽しんでくださいね」
今日の予定は大家の伊織を巻き込んで前哨戦の草抜き大会。
参加賞はおいしい料理と冷えたビール。
「参加賞狙いですが、仕事から帰ったら参加するつもりですよ」
「でも、お仕事大変でしょ？ 無理しないでね」
会社に遅刻すると河野に促されて足早に歩き出した。
忘れていたが――帰宅を待つ人がいるというのは面映ゆくてうれしい気持ちになる。そして頑張ろうという気持ちにも。
（できるだけ早く仕事を終わらせるっ！）
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