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気が付いたら座敷にのべられた布団の中にいた。
風鈴を鳴らす風に蚊取り線香の匂い。
目を覚ますと茉莉は母に怒られた。父は黙って頭を撫でてくれた。
(……夢だったのかなぁ)
熱い息を吐いて、寝返りを打った。
洞の奥にあったのは不思議な家。
名前も知らない色とりどりの花が咲き、鳥が歌う。
二人で折り紙やかくれんぼをして遊んだ。
日が傾いて色づくころ、寂しそうな顔になったのが忘れられない。
(お友達と遊んでただけ)
どこでなにをしていたと問われて、そう説明した。
茉莉があの場所で保護されたのは家を出てから三日も経っていたらしい。
ちゃんと暗くなる前に帰って来たのだから、なにかがおかしい。
――あげる。
帰り際に手のひらに握り込まされた――小さな珠。
大きさは駄菓子屋で買ってもらった大きな飴玉とおなじくらい。
つぶれた楕円は猫が身体を丸めたような形をしている。
色はおいしそうなイチゴミルク。
口の中に入れたらおいしいかもしれない。
――お守りだから、大切にしてね。
そう言われたことを思い出して、なくさないようにきゅっと握りしめた。
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