原爆の子

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原爆の子

拓司はジョージさんの番組にみゆきと一緒にまたでて正式に結婚報告を番組内でやった。 私田山拓司と田守みゆきは今日結婚いたしました。番組内がどよめいたのと同時にジョージさんがホントかよ?と言って周りがざわざわし出した。 拓司がいった。今後田守みゆきは田山みゆきとなります。皆さんありがとうございます。 そのとき結婚行進曲が流れ拓司は自分のポケットマネーで買った結婚指輪をみゆきの指に通し二人はキスを交わした。 それからまもなく、雌雄が対のかたつむりが交尾するように6月の熱いつゆに二人は結ばれ、清が産まれた。暑い夏だった。 そんな幸せは一年で終わった、二人に仕事が急に来なくなったのだ。拓司は広島の江波にあるぼろアパートを拠点に黒電話の呼び鈴を待っていた。みゆきは朝日パークでコロナかでマスクをして清をあやしながら青果部で働いた。そして帰った後二人は喧嘩になった。貴方!私この子を二人で文句一つ言わずコロナ渦の中でマスクして清ちゃんをおんぶしてあやしながら朝日パークで働いてるの!貴方一日なにをやってたのよ!すると卓志が言った。俺はおまえたちを食わせようとして一生懸命にしごとまってるんだ。俺だっておまえたちに苦労はさせたくないんだ。畜生!そういってボロボロのアパートのたたみをばんとたたいた。 貴方分かってるの?明日がこのアパートをでるひなのよ。 わかってるよ。分かってない!貴方現実を直視して。私たち今日も明日も食べるものがないの。現実はドラマではないの。急に展開が変わることなんかないの。 そういうと清を抱きしめたまま崩れて倒れた。すごい熱だった。清も熱があった。体温は38度あった。 おまえまさかコロナじゃないよな?そういう言葉を詰まらせて喉元まででかかった言葉を押し殺し、拓司はすぐ救急車をよんじゃるといった。 救急車が到着した時二人ともぐったりしていた。救急隊員が風邪症状があったり、鼻水、くしゃみ、咳はなかったですかと拓司にきいた時、たくしはこうつげた。確か歯茎から血が出たり、はなじがでてました二人とも。すると救急隊員がやっぱりピカドンか、といって奥さんとお子さんは広島原爆病院に搬送しますといった。拓司も後でついて行くと言った。 広島原爆病院の中はひんやりしていて非人間的で金属的で冷酷な魂のない狂ったヒトラーの醸し出す異様な雰囲気を感じて拓司は身震いした、寒い。機械的だ。まさに岸総理が言われる魂の殺戮者で魔王サタンの兵器であった。、こう告げたのが八月のことだった。冷房が効いている以上に背中から寒気がした。 そこに一人の医師が拓司の前に来てこう告げた。 奥さんとお子さんはよくいままで耐えられましたね。二人とも急性骨髄性白血病であと一年の命です。ドナーがいればのはなしですが、二人とも長くはないでしょう。 拓司は必死になって先生なんとかならんのですか!と言っても首を横に振り冷たい聴診器を首にぶら下げて医師の詰め所に帰って行った。 みゆきと清は無菌室で休んでいるので合えないのだそうだった。 拓司は絶望感を初めて味わった。長く苦しいこの苦しみはかなり深遠で深いものだった。 原爆のやつめ、戦争のやつめ!こうなることは百も承知だったがおまえを絶対許さない。そう思って一人さみしくアパートに帰っていった。 拓司はなにを思ったかリヤカーを借りた。横丁のお好み焼き屋さんのおばちゃんのところのリアカーだ。拓史は最後の晩餐だと思ってその行きつけの大吉というお好み焼き屋で豚玉を頼んで小手を使ってゆっくり食べ始めて大吉のおばちゃんにみゆきと清のことを話し始めた。 おばちゃんはひばくしゃだった。 おばちゃんも広島原爆の放射能による病が進行していておばちゃん自身も黒い手帳を持っていた。ぞくにいう原爆手帳だ。 拓司君や、みゆきちゃんときよぼうはもう長くないんじゃね。年の順でいくと私が最初なんよ本当は、てんにかみさまがいるのならみゆきちゃんと清ちゃんに変わって私が亡くなろうおもうんよ。 拓司は言った。おばちゃん、天は俺らを見放したんよ。おばちゃん、神もほとけもないんよこの現実には。 そういってリヤカーをおばちゃんに頼んで借りさせてもらった。おばちゃんが言った。あんたら生活ができんのじゃったらうちにおいでよ。そういって涙を流した。 拓司はそこまで俺たち惨めじゃないよ、そんなこと言わないでくれ。と言ってお好み焼きを半分パックに入れてもらいリアカーを引いて帰って行った。 拓司は清たちを生かそう生かそうと思い、二人が退院した時リヤカーに二人を乗せて北に北に山陰目指して歩いた。最後の希望を命の希望を親戚も誰もいない山陰にかけた。清とみゆきは原爆の子じゃあないんじゃ。と思って中国山脈の彼方に消えていった。
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